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  • 執筆者の写真nobuhiro nagai

低ヘッドスピードゴルファーの適正ドライバーを考える


ギガ死による速度制限の様に、左肩の痛みで低ヘッドスピード制限がかかってしまったゴルフから何かを学ぼうというシリーズ。今回からはクラブセッティングとクラブ選びの話です。


今のゴルフ市場を支えている大きなゾーンとしては、60歳以上のアクティブシニアの世代があります。

この層はゴルフに対してかなり積極的な出費をしてくださる世代だと思いますし、新しく発売されるゴルフクラブへの関心も高いです。


私も新製品試打の仕事などで、この世代向けの高機能クラブをテストする事は多々あり、その実力にはいつも驚かされていました。


例えば、私が使っている様ないわゆるアスリート向け軟鉄鍛造のキャビティバックの7番アイアンで試打すると、インパクト効率の値は1.38辺りのイメージです。


これはロフトが寝ている事によって、インパクトのエネルギーが分散され、それによってボールが高く打ち出されるのと、バックスピンが発生し、いわゆるアイアンらしい弾道となって、距離を刻みボールを狙った所に止めるという技術へとつながります。


いわゆる「距離感」とか「タッチ」というのは、このインパクトのエネルギーのロスの具合によって作られている訳です。


それが同じ7番アイアンでも、アクティブシニア向けの高機能アイアンでは、インパクト効率値が、1.45とか1.47とか出て来るのです。これはドライバーでのインパクト効率としても悪くない値です。7番アイアンの様にロフトが寝ていながら、こんな数値が出るというのは力学的に考えると非常に興味深いです。 フェース面の素材や構造、深いアンダーカットキャビティなどの製法により、いわゆる反発係数を上げて、ボール初速が出る様なクラブに仕上げているということでしょうから、その開発力は素晴らしいと思います。  こう言ったアクティブシニア向けの高機能クラブの実力を理解した上で、今の自分の低ヘッドスピードゴルフから、どんなゴルフクラブが必要なのか?を考えて行きたいと思います。 冒頭に差し込んだのが、現在私が使っているクラブセットです。これは左肩を痛める前のままのセッティングです。 先ずはドライバーから。使っているのはキャロウェイのエピックUSモデル(10.5度)です。ぼちぼち使い始めて2年が経つ頃でしょうか?今季はPINGのG410プラスのLSテックを使いたかったのですが、こんな状態では見送り止む無しです。 シャフトは昨年の秋からグラファイトデザインのVR-6のSに変えましたが、非常に相性が良くてゴルフクラブの完成度としてはかなり高いレベルにあると思います。事実、この春に今年話題の新製品と打ち比べをした時も、結果的には全く遜色ない数値が出ていました。

現状、やや弾道は低いですが、振りやすさとミート率の高さに関しては、何ら問題はありません。高い弾道でキャリーを稼いで飛ばしたい時は、ヘッドの入れ方を変えて自分で打ち出し角を作ればいいので、ロフト変更も不要です。


なので、ヘッドに関しては、全く問題ないです。面白いのは、シャフトです。今回の低ヘッドスピード体験で現状のシャフト選びでは、全く触れられていない、新しい基準を発見しました。


怪我をする前のヘッドスピードは46m/s前後だったと思うので、現状のVR-6のS至極適正なスペックだと思います。ヘッドとの相性も素晴らしいです。


もし、今、シャフトのフィッティングを受けたなら、ヘッドスピードは38m/s前後だと思われるので、40g台か50g台のRシャフトあたりを勧められそうですが、今のVR-6のSで何ら問題はありません。


その理由を考えた時に、その新しい基準を理解しました。それは、名付けるならレスポンス値とでもいうモノです。


レスポンス値とは、そのゴルファーがスイング中に自分のMAXのヘッドスピードにたどり着くまでの時間ですので、加速度の様なモノですね。


ボールを打つ際には、テークバックから切り返してダウンスイングに入る訳ですが、その時に一度クラブのスピードはゼロになります。


そこからダウンスイング方向の動作に入って、インパクトまでに加速して最大のヘッドスピードでボールにコンタクトするのが理想のゴルフスイングです。


よく、長尺ドライバーを使っても思うように飛距離が伸びないというゴルファー声に対して、今は亡きクラブデザイナーの竹林隆光さんは


「長尺ドライバーを振り切るパワーがあれば、力学的には必ずヘッドスピードは上がっています。でも、そのヘッドスピードがMAXになる位置とインパクトの位置が合っていないんだと思います。」


と答えられていました。なるほど、これぞまさにゴルフクラブと技術の関係を現す事例ですね。


どんなに力学的に優位な性能を持つゴルフクラブを手にしたとしても、それをインパクトに反映出来なければ、そのクラブの性能が結果に繋がらない訳です。


レスポンス値も、ある意味これに近いですが、シャフト選びの基準として考えるとインパクト技術まで取り込まなくていいと思います。


私の場合、今はヘッドスピードが38m/s前後ですが、切り返しで一度ゼロになったヘッドスピードが38m/sになるまでの速度の立ち上がりは、本当に筋力が衰えてヘッドスピードが低下しているのでないので、まだシャープです。


車に例えると、アクセルを踏み込んだ際のレスポンスが良くて加速度が高い状態と言えるのでしょうか?(あまり車には詳しくありません)。


これが本当に加齢が進み、筋力体力が低下していくのに比例してヘッドスピードが38m/sになった場合は、その加速度も低下しているはずです。


その時は、今のVR-6のSというスペックは厳しいと感じると思われます。


いわゆるアクティブシニア向けのドライバーに装着されているシャフトは、しなりを大きくして振りやすさを出していますが、レスポンス値的に見ると、ゆったりとした加速度にマッチしているように感じます。


私の様に加速度がシャープなゴルファーが、こういうタイプのシャフトを打つと、シャフトのレスポンスとマッチせずに自分のイメージどおりにインパクトに付いてこなくなるか、強い繊維を使っているシャフトだとシャフトが動き過ぎてしまい打ちにくいと感じます。


この加速度に対するシャフトのレスポンスは、従来の基準だとタイミングとかスイングテンポに置き換えられている様に思いますが、重量や長さ、硬度ようにハッキリとした数値で表す事は出来ません。


このレスポンス値に関係していると思われるのはシャフトで使っているカーボン繊維の弾性率で、いわゆる高弾性繊維と言われる素材は、レスポンスが良くスムーズにゴルファーのパワーをスピードに変換してくれる様に思います。


その昔、グラファイトデザインの創業者である故山田恵さんから、当時ジャンボ尾崎プロに支給していると言う超高弾性繊維のドライバーシャフトを頂いて、360CCくらいのチタンヘッドに入れて使った事がありますが、確かに不思議なシャフトでした。


重量的には80グラムくらいあってヘビー級なのですが、振るとスムーズに加速して、たしかによく飛びました。


山田さんは「高過ぎて売れないんだよ!」と仰っていたのを覚えていますが、超高弾性繊維の性能には驚きました。


その後、しばらくした頃に、


「ツアープロしか手に出来ない高弾性繊維をフルレングスで使用したシャフトをあなたに届けます」


という様な謳い文句で登場してきたのが、初代のクレイジー。


現在のクレイジーは初代のクレイジーとは別会社ですが、ブランドとフィロソフィーを受け継いでのシャフトつくりは好評です。


当時、クレイジーを使っているゴルファーのスペックを見ると、XとかSXなど一見オーバースペックに思える様なシャフトでしたが、皆さん気持ちよく振って好結果を得ていました。


なるほど、クレイジーの謳っているフルレングスでの高弾性繊維というのは、あのジャンボさんのシャフトと同じなんだな、と理解出来ました。


逆に低弾性繊維やボロンなど金属系の繊維はレスポンスが遅く、シャフトのフィーリングとしては「ねばり」と呼ばれるしなり感や、「おだやかな」シャフト挙動とリンクします。


という事で、ちょっと抽象的な話しになってしまいましたが、もしヘッドスピード38m/sながらUSエピック10.5度にグラファイトデザインのVR-6のSを挿したドライバーを使っているゴルファーが居たら、私も「そんなの無理です!」と言っていたと思われますが、実はそうでは無かったというのがオチでした。


明日はフェアウェイウッドの話し。ユーティリティーまで行けるでしょうか?












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