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  • 執筆者の写真nobuhiro nagai

棍棒からゴルフクラブ、そしてハンマー!~②

前回は羊飼いの棍棒から、ゴルフクラブへと変わっていく過程の推測を記事としました。 そして、その棍棒から派生したゴルフクラブのDNAはやはりスチールシャフトでの近代ゴルフまで継承されていて、今のゴルフ界の主流である近代ゴルフ族の方々のDNAを解析するなら、そこに起源があると推測できます。 棍棒をあらためて解析していくと、必要になってくるのが重さの濃淡。これは現代のゴルフクラブの性能や特性を現す数値(スペック)には無い概念となります。 例えばヘッドの重心特性を現す基準となる数値はいくつかあり、だいぶゴルファーの中にも浸透して来ています。 仮にこのヘッドの重心距離が何ミリでその他重心特性や慣性モーメントを表す数値はコレ。そしてヘッド重量は何グラムで重心アングルが何度など、数字からヘッドの性格をイメージする事は、ゴルフクラブ好きのゴルファーなら出来ると思います。


でも、それらが同じ数値だから同じスペックだと言っても、チタン単一素材でのプレーンな空洞形状によるヘッドと、チタン&カーボン複合ヘッドでタングステンウェイトを装着してのヘッドでの振り心地が同じになるとは限らず、時には全く違うモノになるというのは理解して頂けると思います。 この違和感の正体が重さの濃淡です。全体形状に対し一部分に重さが集まっているヘッドと、そうでないヘッドの差はとても大きいです。


最近では、PINGのG20というドライバーを評価するゴルファーは、その後のPINGのタングステンウェイトがソール後方に装着されたドライバーは全くダメだというのがそれを現しています。実はコレ、自分の話しでして、G20を使い始めて結局4シーズンくらいG20を使い続けました。 ソレを正しく言うならG20を使い続けたかった訳ではなく、新しいモデルにシフト出来なかったという事です。G20以降のPINGのドライバーは、ソール後方にタングステンウェイトが入り、ヘッド形状から見た重さの濃淡に、かなりの偏りが生まれています。


その頃、PING社の方に言われたのが、 「G20から変えられないのは、永井さんと大山志保プロだけです!」


G20はプレーンな空洞形状による460CCヘッド。その後のPINGのドライバーは深く低い重心位置を目指して、ソール後方にタングステンウェイトを装着しています。


やはりこれはゴルフクラブとしては、全く異なる感覚です。プレーンなG20に慣れ親しんでいた大山志保選手も、その違和感に慣れるのには、かなりの月日を要した模様です。 クラブの振り易さを、クラブの長さや重さで評価したり、最近ではクラブ全体の慣性モーメントの数値で評価する事など、現代のゴルフのスタンダードになっていますが、この重さの濃淡で見るという概念は欠如しています。

重さの濃淡は、ハンマー型を説く上で非常に重要な要素となります。 例えば餅つきの杵が同じ長さだとして、餅をつくヘッドの重さの感じ方によって、節(支点)となる右手を添える位置を、自然と変える感覚を人間は持っています。もし標準的なヘッドの重さの杵で餅をついた後、さらにヘッドの重い杵に持ち替えた場合、右手をよりヘッドに近いところに添えて、仕事をするでしょう。 これが手にした道具の重さの濃淡に対して、節の位置を変えるという調整能力です。それ程、難しい話しではないと思います。 手にしている道具の全体的な形状に対しての重さの濃淡を感じる事は、その道具を効率よく使いこなす上でとても重要です。 ヘッド側の重さが際立つ様なハンマーを手にすれば、自ずと右手を添える位置をヘッドに近いところに添えるでしょう。逆に全体形状から見て、それ程ヘッドの重さを感じなければ、それ程右手を添える位置がヘッド側に寄るとは思えませんが、形状と重さの濃淡の感じ方により、左右の手を離して節を作って道具を持った場合、その道具を使った運動は振り子や円運動にはならないと思います。 この様な切り口で見た場合に、棍棒の特長として言えるのが単一素材単一形状ゆえ、重さの濃淡が無いという事。となると、棍棒の端を両手で持って、棍棒全体の重さを感じながら振り子や円運動で仕事をするのが自然か?と思います。 原始的なゴルフのトーナメン(全英オープンは1860年にスタート)においては、全ての参加者が棍棒ではなくゴルフクラブを手にプレーしている訳ですが、この手にする道具の濃淡は、棍棒からヒッコリー&ロングノースへと進化しても、あまり変わらないと思います。


その頃から近代にかけて、時々棍棒の様な特性に帰ることで好結果を得るストーリーがあります。 1900年頃に活躍していたウォルター・トラビス選手は、センターシャフト形状の「スケネクスタディ」というセンターシャフト形状のパターでパットを決めまくり活躍しました。


この後、USGAはセンターシャフトはあまりに良く入るという事で「スケネクスタディ」は使用禁止となりました。今ではそのルールは解かれており、市場ではセンターシャフトのパターは一定の人気を保っており、ツアー選手にも多くの愛用者がいます。 昨今でも、シャフト軸の延長線に近いところにヘッド重心位置を置くセンターシャフト系のドライバー(ルール的には違反クラブ)も発売されているこの頃。


コレらのクラブのDNAを解析したなら、きっと棍棒をルーツと見る事が出来るでしょう。


とりあえず、ヒッコリーのドライビングクラブとM6の比較です。



先ずは、バランスポイント(クラブ全体の重心位置)。重さの濃淡を現すには、一番客観的な指針かもしれません。単一素材で単一形状な棍棒のバランスポイントは、ちょうど真ん中に位置します。


ゴルフクラブの場合はヘッドに近いところにバランスポイントが来ますが、その中でもヒッコリークラブの方が短いのに、バランスポイントは手元側にあるのが分かります。

次はクラブ総重量。ヒッコリーが思ったより軽いですが、やや短目のせいかもしれません。




最後はいわゆるスイングウェート。ヒッコリークラブの方が総重量が重いのにヘッドバランスは軽め。M6の方がヘッドが効いています。


これらを総合的に考えると、形状や長さに対しての濃淡の違いというのが、何となく見えて来ると思います。


実際にこの時に2本のクラブを手に振ってみた感覚は、ヒッコリークラブはシャフトの重さをはっきりと感じ、そのシャフトの重さがクラブの臍となり、その先にヘッドがある感覚です。全体形状に対しては、重さと長さを感じやすかったです。


方やM6はシャフトの重さは感じず、ヘッドの重さというか存在感が強いです。全体的なバランスとしては、大きなヘッドに対してシャフトが短く感じます。 という事で、2回に渡り現代のゴルフクラブのハンマー性について、私の考え方をお話ししてきました。


まあ、50グラム台前後の強靭なシャフトにカチャカチャで460CCの大型ヘッドを取り付けている様は、長くて軽く強い柄にチタン合金製のアタマを取り付けて、ボールを叩き潰す為のハンマーを組み立てているいると理解するだけで十分だったかもしれません。

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